この作者はとても厳しい時代の中に生きています。しかし同時に彼は先祖から語り伝えられた主の御業を思い起こしています。私たちが親から子へ、子から孫へと主が自分たちにしてくださったことを語り伝えることはとても大切なことです。昔の人々は、紙が貴重品であり、まだ印刷技術などもない時代には、その信仰の証しを口伝で手渡していったのでした。神がどのように、イスラエルの民をエジプトで奴隷であったところから救い出してくださったのか、またイスラエルの先祖たちがどのように導かれていったのか・・・そういったことを彼らは先祖たちから聞いてきたのです。
しかし、その神が今は自分たちを救ってくださらないかのように思える・・・この詩編の記者は伝え聞いてきた神の物語と、今自分の置かれている状況のギャップに苦しみます。けれども、彼は主に助けを求め、主がその力強い御手をもって自分たちを贖い、救い出してくださることを信じて祈るのです。