ヨセフは自分の銀の杯をベニヤミンの荷物の袋の中に入れて、一芝居打ちます。ベニヤミンを捕らえて奴隷にすると荒々しく語り、兄たちがどのような態度を取るかを見ようとしたのでしょう。
荒々しく語るヨセフの前に進み出て語るユダの姿は、ヨセフの知っているユダとは全く違うものでした。ユダはかつて、ヨセフをミデアン人の商人たちに売り渡した首謀者です。ヨセフが泣いて懇願しても、冷たくヨセフを売り払ったのです。しかし、この時の、ユダは父ヤコブのことを心配し、ベニヤミンの代わりに自分が奴隷になるから、ベニヤミンだけは父のもとに帰らせてほしいと必死で懇願するのでした。そこにあったのは、弟バニヤミンを自分の身を張って守ろうとする兄の姿であり、父ヤコブの心の痛みを心底心配する息子の姿でした。ヨセフは兄たちが昔とはすっかり変わっているのを見てどんなにうれしかったことでしょうか。